不動産屋は「待つ」のが仕事である。なかには開発屋のように朝の八時ごろから朝礼をやって吉野屋の牛井を食べてから、いざ出陣という軍隊みたいなところもあるが、不動産屋の出勤は九時半から。電話で銀行と情報交換したあと、お客さん宅へ行き奥さんと顔つなぎしたあと、車のなかで待機する。待機といってもほとんどサボっているのと同じことだが、要は会社からの指示待ち、お客さんからの連絡待ちといったところだ。待機のまま、一日が終わってしまう場合もあるが、半月に一度、八○○○万クラスの両手をやれば、まあまあという世界だから、営業マンも会社も落ち着いたものである。ときには街場の不動産屋を訪れ、情報交換もする。大手同士の社員が接することは、まずない。街の不動産屋は安い自社物件のマンションなどを売ってくれるし、彼らの情報源は貴重である。われわれの給料はフルコミッションだと三○四○パーセント、一部固定で一○万プラス一○二○パーセント、完全固定で手当がプラス一パーセント。サボっているとはいったが、一年の半分はキャンペーン、年中ノルマで追われる仕事であるから、慣れるまではけっして楽とはいえない。わたしの会社では、一、二、三、七、八、九の各月にキャンペーンがあり、この月には確実に成績を上げなければならないし、わたしの場合、年間のノルマは手数料だけで四○○○万になる。最近では、買いたいというお客さんはあってもローンが通らないというケースが多く、成約に至らないことがあるから油断できないのだ。こちらが苦労して、やっとお客さんの気持ちをつかんだと思ったら、住宅金融公庫は無論、銀行、ノンバンクの融資が下りないなどということになって、すべてがパーになることがある。基本的にはお客さんの甘い計画が問題なのだが、営業しているこちらの焦りも大きな原因になっていると思う。